2012年5月15日火曜日

安全管理対策の講義

2009年以来、久しぶりに安全管理対策室主催の講義を担当した。

自分の役割はジャクソンリースやアンビューバッグなどの器具、酸素ボンベなどについて原理や使い方を説明し、患者さんの搬送に役立ててもらうというものだ。

自分のノートパソコンをつないだところ、プロジェクタのケーブルがゆるんでいたせいか、スクリーンが真っ赤になるというトラブルはあったが、その他はまあまあ無事に終了。

参加者のほとんどは看護師さんだったと思うが、若い医師やベテランの医師もちらほらといった感じだった。

リスクマネージャーとして安全管理に熱心に取り組んでいるつもりでも、講義を担当してみることで新しく知った院内のルールなんかもあったりして、自分としてもけっこう勉強になる。

2012年5月10日木曜日

腕からガスもれ

麻酔器の始業前点検をしていたら、おびただしい量のリークがあることに気づいた。
フレッシュガスを 2L/min 流していてもなお回路内圧が下がるということは、それだけリークがあったというわけだ。

一応 CO2 キャニスタをチェックしたのだが、特に変わりなし。
バッグに破れはなさそうだし、感染防止用のフィルターの割れもなし。
入室時刻が迫ってくるし、困ってしまった。

それで看護師さんに頼んで ME さんを呼んでもらった。
ME さんは何回か蛇管を交換したり、CO2 キャニスタを再度チェックしたりして苦労していたようだが、最後にはついに漏れの個所を発見した。

ゆるんでいたのはエスパイアのバッグがぶらさがっている「腕」の部分。
この腕が自由に回転できるように関節がついているのだが、今回はその関節部分のパッキンがゆるんでいたということだった。

恥ずかしながら、全くそこには発想が及ばなかった。
またひとつ、賢くなった。

2012年5月9日水曜日

意識と痛みの機能的脳画像法研究

夕方7時から M&D タワー2階で、神経内科、精神神経科、脳神経外科、麻酔科による四科合同カンファレンスがあった。

今日は麻酔科の当番だったのだが、「意識と痛みの機能的脳画像法研究」というタイトルで、倉田二郎先生による講演が行われた。

講演は二部構成になっていて、前半は全身麻酔の意識消失メカニズムに関する研究で、後半は慢性疼痛の脳内メカニズムに関する研究についての話だった。

倉田先生がピッツバーグから帰国されてからの一連の仕事がひとつの物語になっていて、それがこれからもどんどん続いていきそうな情熱を感じさせるところが本当にすばらしい。

他科の先生方も倉田先生の研究に高い関心を示しており、他科といい関係を保ちつつこれからさまざまなプロジェクトが始まっていくような予感がする。

2012年5月8日火曜日

研究倫理講習会

大学で研究倫理講習会があり、3年ぶりぐらいだと思うが久しぶりに出席した。

この講習会を受講していないと科研費申請や研究倫理審査の申請ができないとのことで、当直明けで眠いことこの上なかったが、強い意志で勉強してきた。

簡単な話や理解困難な話、自分には縁遠い話など内容はいろいろだったが、「被験者への説明文書をひと目見れば、どういう気持ちで研究者が被験者に向き合っているかがわかる」という話には、はっとさせられた。

莫大な数の研究倫理審査の申請を扱っている人ならではの視点だと思うのだが、この話がひょっとしたら今日一番の収穫だったかもしれない。

2012年4月30日月曜日

ボストンの交通

きちんとボストンの交通機関について調べていけばよかったのだが、中途半端な知識のまま出かけてしまったために、ひどく混乱してしまうという苦い経験をしてしまった。
なので、反省をふまえて今後のために備忘録に残しておく。

ボストンでは公共交通機関が発達しており、路線ごとに Red Line とか Green Line といったぐあいに色で識別されていてとても便利である。
(ちなみに、Red Line, Green Line, Orange Line, Blue Line はそれぞれ地下鉄。)
自分の泊ったホテルは Silver Line 沿いにあったため、空港から Silver Line という名前の地下鉄に乗るというイメージを思い描いていた。

ところが、だ。
いろいろうろつきまわっても、空港には地下鉄が見当たらないのである。
空港の人に Silver Line がどこかと訊ねても、空港の外のバス通りを教えてくれるだけ・・・。

すっかり思考のポケットにはまりこんでしまった形だったのだが、Silver Line が地下鉄ではなくてバスだと気づくのに1時間ぐらいかかってしまっただろうか・・・。
違う種類の乗り物ならば、"Subway Map"に載せてほしくなかった・・・。

その Silver Line なのだが同じ停留所(駅)を通るバスでも、なぜか一部は道路を走り、一部は地下鉄のようなところを走っている。
往きが道路だったので、当然帰りは道路の逆側に停留所があるはず・・・と思っていたのに見つからず、実は近くに駅があって、その中を地下鉄のように走っていたりする。

右上の写真は "World Trade Center" で撮ったものなのだが、地下鉄のような改札口を通って階段を降りると、この写真のようにバスのための地下道があるというわけだ。
ホテルの人の助けがなかったら、ここには行き着けなかったと思う。

ボストンからの帰りは JAL の直行便で、快適なこと、この上なかった。
真新しい飛行機で、窓のそばのボタンを押すと、窓に段階的に日よけ用に色が少しずつついていくようになっていたりする。

着陸前に高度を下げた際に水が滴り落ちる現象はあったものの、たいして気にならない。
自分用のスクリーンでマンガを読むことができるというサービスも目新しかった。

2012年4月29日日曜日

Thoracic Anesthesia Symposium --- 第2日

4/28 (土) 晴れ

第2日とは言っても最終日なので、午前中にワークショップと教育講演、および pros&cons があっただけで終わりとなった。

ワークショップは4つの場所を30分ごとにくるくる回るというもので、どこから回り始めるかがあらかじめ指定されている。
自分の場合は 挿管困難 → 気管支ブロッカー → 傍脊椎エコー → 肺のエコー と回るようになっていた。

なぜかよくわからないが、挿管困難のワークショップでは GlideScope が紹介されず、そのかわりにダブルルーメンチューブ用のエア・トラックが紹介されていた。

ダブルルーメンチューブを気管支ファイバースコープを使って挿管しようとしても必ずしもうまくいかないのは、ファイバースコープの長さがタブルルーメンチューブの挿管には十分ではないということに加え、先端がシングルルーメンチューブよりも固いこととか、ファイバースコープの径とチューブの内腔の間のアソビの部分が問題になるからなのだそうだ。

会場にいる麻酔科医の経験としては、挿管困難患者では一度シングルルーメンチューブを入れて、それからダブルルーメンチューブに入れ替えるという人が多いようだった。
チューブの径は失念したが、困難気道モデルのマネキンを用いたデモでは、シングルルーメンチューブに 14Fr と 11Fr のチューブエクスチェンジャーを1本ずつ入れて、それぞれダブルルーメンチューブの気管ルーメンと気管支ルーメンを通して入れ替えるという方法を紹介していた。

気管支ブロッカーのワークショップではさまざまなブロッカーが紹介されていたが、ちょうど隣が挿管困難のワークショップだったということもあり、挿管困難にも大いに役に立つという印象が非常に強くなった。
ICU への帰室時に、ダブルルーメンからシングルに戻さなくてもいいし・・・。

Cohen の意見としては、左肺の切除や右の中または下葉切除ではどちらでもいいのだが、右上葉切除の症例ではCohen のブロッカーが Fuji ブロッカーに優るとのこと。
Cohen のブロッカーは先端が柔らかいので抜けないが、Fuji ブロッカーは先端が硬いので術者の操作によって抜けてしまうらしい。

(余談: 第1日の夜の懇親会の時に富士システムズの方とお会いした時に教えていただいたのだが、どうやら 「Fuji ブロッカー」という呼び方は正しくないのだそうだ。しかし Narayamaswamy らの論文などで Fuji ブロッカーはある意味世界的に有名になったと思うし、バンクーバーの指導医も Fuji ブロッカーと呼んでいたぐらいなので、これからの修正はいろいろな意味で難しいかも・・・と思う。)

傍脊椎ブロックのワークショップでは、名古屋大学の Dr. Shibata のエコー画像が紹介されていた。
Shibata T, et al.  Anesth Analg 2009; 109: 996-7.
どうやら、エコー上で横突起や肋骨の影と壁側胸膜の間に薬液を投与するのがコツのようで、うまくいくと壁側胸膜が(患者の)前方に移動するらしい。
傍脊椎ブロックのやり方は決してひと通りではなく、さまざまなやり方がある。
バンクーバー時代の指導医が自身のやり方を主張していたが、ワークショップの担当者との間でいまひとつ話がかみあっていないような印象を受けた。

術野から入れるという方法もあり、Sabanathan という外科医が 1988 年に行なったのが初めてらしい(?)。
壁側胸膜外をはがしてポケットのような空間を作り、そこをめがけて皮膚の上から針を刺してカテーテルを挿入する (Sabanathan Technique) とのこと。

傍脊椎ブロックはしばしば硬膜外ブロックと比較されるが、傍脊椎ブロックのやり方によって結果はずいぶんと変わってくるのだそうだ。
たとえばエコーを用いずにブラインドで傍脊椎ブロックを行うと (Messina M, et al.  Minerva Anestesiol 2009; 75: 616-21)、傍脊椎ブロックを過小評価するような結果につながることになる。

それから、傍脊椎ブロックは "extrapleural block" と同義らしいということを初めて学んだ。
恥ずかしながら自分のホームページでは別物として扱っていたので、帰国したら修正することにする。

教育講演は面白かったが、備忘録に残すようなことはそんなになかったような気がする。
話の流れから、"breath down" というのは吸入麻酔薬で導入することを意味するらしい(?)ことを知った。

Pros & Cons は誤解を恐れずに言えば、完全にアソビの範囲内だったと思う。
患者にどのサイズのダブルルーメンチューブを用いるかとか、つねに左用のダブルルーメンチューブを用いるのがいいかどうかとか、エビデンスに基づく診療というよりも、個々の麻酔科医の信念に基づくことがらについて扱ったもの。

2012年4月28日土曜日

Thoracic Anesthesia Symposium --- 第1日

4/27 (金) くもり

Society of Cardiothoracic Anesthesiologists 主催(だと思う)の Thoracic Anesthesia Symposium が、Westin Boston Waterfront で今日と明日の2日間にわたって開催された。

どうも今年が記念すべき第1回らしい。
"Annual" と銘打っているので、これから毎年やるのだろう。
はっきりとは覚えていないのだが、来年はマイアミでやるって言っていたような気がする(まだ、SCA のホームページには明示されていない)。

登録の制限があったこともあり、とてもこじんまりした集会だった。
全部でせいぜい 百数十人ぐらいしかいないのでないだろうか。
遠い国から来たのは自分ぐらいかと思ったが、インドやオーストラリア、ドイツからの出席者もいた。

PBLD などの教育的なプログラムが多く、研究発表はどちらかというと「添え物」的な感じだった。
40 個弱のポスターのうち、正直なところ、原著論文としてアクセプトされそうなものは多くはなかったし・・・。

ウチの大学には肺移植はもちろんのこと、気管手術や VRS さえもないので、自分にとっては得るものが多かった。
でも OLV の呼吸生理を一生懸命やっているような人たち(特に日本人)にとっては物足りないかも・・・。
多くの教育講演で呼吸生理に関する研究が引用されると、そのうちの多くが日本人のものだったりするので、日本の Thoracic Anesthesia はそういう基礎的な部分ではとても強いように感じる。

PBLD も一つのテーブルに 10 人程度とこじんまりしており、日本麻酔科学会のものとは趣きが全く異なる。
ひとつが 30 分間で4つのテーブルを回るのだが、あまりにも慌ただしくて消化不良の感は否めない。
自分としては、ひとつの症例をつきつめる日本麻酔科学会のやり方の方がいいように思う。

その中でも勉強になったと感じたのは、ロボット手術の PBLD だ。
ウチではロボット手術もないのでイメージがあまりわかなかったのだが、患者の体位をテープなどでガチガチに固定しなければいけないこと、ロボットの邪魔をしないようにするために腎摘位に近い体位になること、そういった固定や体位に基づく合併症(特に神経学的後遺症)が起こりうること、麻酔科医の術中の患者へのアクセスが良くないことなどを学ぶことができた。

特に術者とのコミュニケーションの悪さは問題みたいで、大声で何度も注意を促さないといけないことがあるらしい。
突然血圧が下がったので昇圧薬を入れたり四苦八苦していたら、実は術者が心臓を専用の器具で押さえつけていたということが、あとからわかったということもあるのだそうだ。
麻酔科医が術野をスクリーンで必ずしも見ることができないことも、そういうことが起こる原因のひとつだとのこと。

あとは気がついたこととか、役に立ちそうな文献を必死にメモしたので、以下に残しておく。

術後の急性肺傷害関係の文献
Tumage WS, et al.  Chest 1993; 103: 1646-50.
Padley SP, et al.  Radiology 2002; 223: 468-73. (珍しい片側の PPPE の症例)

自分がバンクーバーでやった肺切除後の急性腎傷害に関する仕事も紹介されたが、輸液制限を行いがちな肺切除術において、輸液量が急性腎傷害のリスク因子でなかったことがわかった点は意義深いのだそうだ。
他人の目を通すと、自分の研究の別の価値が見い出してもらえることがあるものらしい。

10年前は HPV 抑制という点から吸入麻酔は良くないとされていたが、今は炎症反応抑制という点から吸入麻酔の方がいいとされているようだ。
Casanova J, et al.  Anesth Analg 2011; 113: 742-8.
De Conno E, et al.  Anesthesiology 2009; 110: 1316-26.
Schilling T, et al.  Anesth Analg 2005; 101: 957-65.

その他、酸化ストレスやサイトカイン関係の論文も、多数紹介されていた。
Schilling T, et al.  Anesth Analg 2005; 101: 957-65.
Funakoshi T, et al.  Br J Anaesth 2004; 92: 558-63.
Lases EC, et al.  Chest 2000; 117: 999-1003.
Misthos P, et al.  Eur J Cardiothorac Surg 2005; 27: 379-82.
Yulug E, et al.  J Surg Res 2007; 139: 253-60.  (遠隔臓器への影響)

虚血再灌流傷害
Reece TB, et al.  Ann Thorac Surg 2005; 79: 1189-95.

無気肺に関する総説
Duggan M, et al.  Anesthesiology 2005; 102: 838-54.

食道手術の合併症は、肺合併症と縫合不全の2つに分類できる。
肺合併症はさらに(誤嚥による)肺炎と ALI/ARDS の2つに分けられる。
術後のリークは血流の良否と関係がある。
リークを防ぐ上で硬膜外は有用かもしれないが、MAP は 70 mmHg をキープすべき。

Sakamoto K, et al.  Cytokine 1994; 6: 181-6.  (食道手術ではサイトカインが高い)
Sato N, et al.  Ann Surg 2002; 236: 184-90.  (ステロイド投与の影響を調べた)

VATS で低酸素血症の治療は難しいので、予防が重要になってくる。
リクルートメントは予防法のひとつ。
Park SH, et al.  Eur J Anaesthesiol 2011; 28: 298-302.  (リクルートメントのタイミング)
Abe K, et al.  J Anesth 2006; 20: 1-5.  (HFJV vs. CPAP)

(個人の意見として紹介されていたが)手術適応が微妙な症例では、硬膜外麻酔を積極的に行ないたい。
ppoFEV1 < 60%
ppoDLCO < 60%
Vo2max < 65% predicted
RV strain/failure

Mediastinal Mass Syndrome の管理方法
自発呼吸から人工換気になると、巨大縦隔腫瘍の重みが気道や肺循環系にのしかかってくる。
Erdos G, et al.  Eur J Anaesthesiol 2009; 26: 627-32.