2013年11月28日木曜日

ファーストネームで呼びあう間柄

エピドラをやるために患者さんを横向けにしたところ、その患者さんの病棟の受け持ちの看護師さんがオペの見学にやって来た。

オペ室のスタッフとのあいさつが終わった後で、その看護師さん、「○○さん、おはようございます、△△です」と、患者さんの姓ではなく下の名前で呼んだ上に、自分のことも下の名前を使っていた。

すると患者さんも、「おう、△△さんか、おはよう」と、やはり下の名前で呼んでいた。

カナダではそれがふつうだったが日本では初めてで、すごく新鮮だった。
なんか仲が良さそうで、すごくうらやましい!

2013年11月22日金曜日

口腔外科専門医試験

「とある病院」で、たまたま歯科だか口腔外科だかの専門医の実地試験に出くわした。

まるで昔の麻酔科指導医試験のように、よその施設の年配の先生(たぶんどこかの教授)がやってきて、目の前で手術の腕前を評価するというものだった。

麻酔科の場合と違うのは、おそらく全体の人数が少ないからなのだと思うのだが、試験を受ける側も評価する側もお互いに知り合いらしく、なんか妙に仲がいいという点だ。

自分が実地試験を受けた時は、試験官だった N 大学の S 教授はつねにニコニコしていたが、直接の上司がおそろしくピリピリしていたことを思い出す。

その口腔外科の実地試験では、ちょうど手術が終わって麻酔器が移動を始めたころに患者も動き出し、「すごい、もう覚めた!」と試験官の先生方にホメてもらったのだが、そのこともせっかくなので忘れないように備忘録に記録しておこうと思う。

2013年11月15日金曜日

オレのスタビライザー

いきさつはよく知らないが、とある有名なスタビライザーの開発者がウチの大学にやって来て、まさにそのスタビライザーを使っている手術を見学していった。

オフポンプではいつものことだが心臓を脱転するたびに血圧がジェットコースターのように動き、安定させるのにひどく苦労してしまった。
カテコラミンの調節はもちろんのこと、ポンピングもした。

ところがその開発者、たまたま血圧が安定している時にモニターを見て、すごく満足そうだった。
「さすが、オレのスタビライザー」って言ってたような気がする。

本当に頑張ってたのは、オレたちなんだけどね・・・。

2013年11月10日日曜日

初めての遠近両用体験

本をあまり読まなくなったせいか、最近回復してきたように思うのだが、一時期、近くに目の焦点があわなくて本当に困ったことがあった。

留学前は決してはずすことがなかった手背の静脈に、カテが入らなくなったのだ。
なんか静脈が1本の線ではなく、青く平べったくにじんで見えるようだった。

認めたくはないのだが、老眼のせいなのだろう。
東京麻酔専門医会学術委員会の諸先輩方からは、「ねばるのは見苦しいから早くメガネを買え」とアドバイスをいただいていたのだが、くやしいような気持ちが消えなくてふんぎりがつかなかった。

ところが今日、メガネが致命的なレベルまで変形するアクシデントがあり、近所のメガネ屋に行ってみて、遠近両用メガネを体験するチャンスに恵まれた。
確かにすごくよく見える。
新聞の字はもちろんのこと、自分の手背の静脈も。

ただ思ったよりかなり高価で、勧められたのがレンズ1組で6万円だった。
とりあえずメガネの修理だけは済ませて帰ってきたのだが、たぶんきっと近いうちに買うことになると思う。

今回体験してみて良かったのは、自分の今までのイメージとは違って、遠近両用メガネがそんなにおじいさんぽくなかったことだ。
自分がほしいのは「ガリレオ」の湯川准教授(福山雅治)がかけているようなやつで、気分だけは優秀な准教授になってみたい(笑)。

2013年11月3日日曜日

ブックレビュー ・・・ 人間、感激を忘れたらおしまいですよ

臨床麻酔学会でシンポジストを務めたからだと思うのだが、学会場で本を1冊いただいた。
「2013(平成25)年11月1日 初版第1刷発行」 と書いてあるので、出版したばかりということになる。

人間、感激を忘れたらおしまいですよ
臨床麻酔学の父 岡山の提督 - 小坂二度見 言行録
新井達潤 著  山陽新聞出版センター

金沢からの帰りの飛行機の中で一気に読んだ。
大学の学長室に Z 旗を掲げておくなんて、常人のできる技ではない。
かなりすごい人物なのだということは、このエピソード一つだけで容易に察しがつくというものだ。

自分の中では小坂先生が教授として学会とかで講演をされていた記憶は全くないのだが、それもそのはずで 1991 年、私が大学を卒業した年、に教授を退官されたらしい。
まさに、日本の麻酔学の草分けの一人というわけだ。

この本の中では小坂先生が麻酔を志したきっかけと思われるできごとがいくつか描かれているのだが、これがまた歴史を感じさせてなんともすごい。
今ではごくフツーに行なわれている全身麻酔が、当時では最先端の技だったりして、脊麻が切れて患者がもがき苦しみながら死んでいく・・・なんてホラーみたいなことが、日常的にあったようなのだ。
シンジラレナイ・・・。

というわけで、小坂先生の人物像の一端に触れるたけでなく、昔の麻酔がどんな感じだったかを知るのにも役に立ちそうで、秋の夜長に最適の1冊ということでおススメしたい。

2013年11月2日土曜日

日本臨床麻酔学会第33回大会 第2日

金沢駅前にある石川県立音楽堂、ANA クラウンプラザホテル金沢、ホテル日航金沢で行なわれている臨床麻酔学会に昨日から参加している。

昨日は朝4時半に起きて8時前の羽田発の飛行機に乗ったので、体力的にはキツかった。
昨日の分はまた後日、載せることにする。

以下は今日の分のメモ書き。
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○周術期管理チームの新たなステップ

Acute Pain Service (APS) は欧米を中心に普及しているが、痛みの評価は必ずしも十分には行われていない。
APS が稼働していてもなお、3割程度の患者は痛みを感じている。
APS はコストがかかるから、やめた方がいいという意見もあり。
日本麻酔科学会では、周術期管理加算(仮称)を獲得すべく、活動している。

APS をすでに立ち上げた施設の麻酔科では・・・
IV-PCA、PCEA のついた患者の回診は1日1回
ボタンの押し方の指導がメイン
PCEA のメニュー 0.25% レボブピバカイン 150ml + 生食 130 ml + フェンタニル 20 ml で 4~6 ml/hr

消化器外科の医師にとっては、NSAIDs の使用は熱型に影響を与えるので好まない。

薬剤師が積極的に APS に関わっている病院では・・・
PCA 用 0.2% アナペイン 288 ml (+/- フェンタニル 6A) --- 院内製剤 4 ml/hr
PCA ポンプの説明は薬剤師が行っている。

専属ナースや麻酔科医などの人材確保のほか、PCA ポンプや専用輸液セットなどのランニング・コストがかかる。
PCA ポンプのリース代が数千万円
管理加算の獲得が望まれる。

下顎枝矢状分割術を対象にした遺伝子多型の研究
遺伝子によって、痛がりの人やオピオイドの効かない人が存在するということ。
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○プレセデックスのランチョンセミナー

副作用として低血圧、徐脈のみならず、高血圧に注意
高血圧は高用量をボーラスで投与すると起こることあり。
1 ug/kg を 10分かけて投与する。 ひきつづき 0.5 ug/kg/hr
オンセットが遅く、回復が遅いのが難点

(6月に添付文書が改訂されたらしく、「全身麻酔に移行する意識下気管支ファイバー挿管に対する本剤の有効性及び安全性は確立されていない」という文言が追加されていた。)
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○専門医が伝えるプロの技4

最近はオピオイドベースの麻酔が多いので、マスクや声門上器具による維持よりもむしろ気管挿管 + 筋弛緩に移行しつつある。
チューブのサイズ選択に迷うようなら、特に腹腔鏡や胸腔鏡手術ではカフ付きチューブを用いる。
ビデオ喉頭鏡があるので、先天奇形による挿管困難も克服できる。
揮発性吸入麻酔薬ベースの麻酔ではバッキングから開眼までは抜管すべきではないとされていたが、オピオイドベースの麻酔では抜管はいつでもいい。

ハロタン時代は emergence agitation (EA) は少なかったが、セボ・デスの時代は多い。
EA は原因不明で、就学前、不安が強い、痛み、眼科・耳鼻科手術がリスク因子。
EA の予防/治療にはミダゾラム、オピオイド、ケタミン、プロポフォール、デクスメデトミジンなど。

新生児では痛みを抑えることが stress response を抑え、予後を改善する。
動物実験の神経毒性をヒトで証明することは難しく、しかも環境の要因も見逃せないことから、吸麻よりも神経毒性が少ないオピオイドがいいのではないか。
肥厚性幽門狭窄症では、術後無呼吸となることがある。

超音波ガイド下の中心静脈カテーテル挿入は小児では賛否両論があり、評価は定まっていない。
小児の場合は椎骨動脈は浅く、内頸静脈の裏に存在することあり。
その他、頸横動脈とか甲状頸動脈が内頸静脈のそばにあることあり。
頸部の中央よりも末梢側での穿刺が安全だろう。

小児での TEE プローブ挿入は、気道に対する影響が大きい。
プローブ先端の位置によっても影響は変わり、奥に進めると影響は小さい。
プローブの種類によっては、体重 5 kg 以下でも使える。
組織酸素飽和度モニターを、腎臓でも応用できる。