2014年10月14日火曜日

ASA 第3日 --- 発表が無事終了しました

午前中にデータベースに関するポスターセッションがあり、今年もなんとか無事に発表が終了した。

昨年とはやり方が少し異なり、一人あたりの E-poster のディスプレー占拠時間が 30 分とあらかじめ定まっており、その間にモデレーターがまわってくるという形式だった。

われわれの発表は名前がセッションの中で一番上にあったので、当然最初に発表するものだと思ったのだが実際にはそうではなく、ちょっと混乱してしまった。

同様の混乱は他の日本人の研究者の間にも見られたようで、そういうのに瞬時に対応する現場力のようなもの(?)が求められているような気がした。

2014年10月13日月曜日

ASA 第2日 --- 外は暑いが中は寒い

ニューオリンズは1日のうちで時々雨が降るのだが、基本的には晴天で暑いぐらいだ。
一方、学会場の中は寒く感じるぐらいに冷え込んでおり、ジャケットを着ていてちょうどいいぐらいで、電気がもったいないという気がしてしまう。

ASA では RCL やパネルセッションのほかに Point-Counterpoint という pros-cons セッションがいくつかあり、今日は HES に関するものを見に行ってきた。

"Perioperative colloid administration - Should it be abandoned?" というタイトルだったが、HES 反対派が NEJM などのデータを紹介しつつ HES の危険性を訴え、賛成派が危険性の根拠となる研究のデザインや統計手法の問題点を指摘するといった予想通りの展開で、消化不良だったように感じられた。
聴衆の一人が主張していたが、本当のところ危険なのかどうか、凝固障害や腎傷害の機序の面から深く討論してほしかったように感じる。

ASA の Choose wisely campaign のひとつに「コロイドをルーチンで投与するのはやめよう」というのがあるらしいのだが、そういうキャンペーンがあるということを知ったのは有益だった。

一方、心不全患者の周術期管理に関するパネルセッションは、自分のよく知らない領域だけに学ぶところが多かった。

特にこの分野で UpToDate に執筆していると言っていたスピーカーの話は、ARB の術前中止の議論など、当たり前だが UpToDate に載っていることがそのまま出てきておもしろかった。
このスピーカーによると、「低血圧がなければ ARB は術前は続けた方がいい」という論調だった。

また、心不全患者における周術期のリスクが過小評価されているということについても、一貫して主張していた。

さまざまな非心臓手術の術式において 30 日死亡率などのアウトカムを比較すると、冠動脈疾患患者よりも心不全患者の方が悪い。 (Hammill BG, et al.  Anesthesiology 2008; 108: 559-67.)

肺高血圧患者の循環管理のポイント
1) 冠灌流を保ち右室の虚血を避けるために、末梢血管抵抗を保つ。
2) 肺血管抵抗の上昇を最小限にする。 --- 吸入薬など選択性のある肺血管拡張薬を用いる
3) 右室の前負荷と収縮力を保つ。
4) 右室のモニターを用いる。

LVAD を有する患者の循環管理のポイント
1) リズムと心拍数を保つ。
2) 右心機能が保たれていることを確認する。
3) 末梢血管抵抗が大きく変化しないようにする。
4) 前負荷を保つ。前負荷低下はトラブルのもと。
5) 血管収縮薬と強心薬を用いる。
6) カニューレがずれるので、心マをしてはいけない。

2014年10月12日日曜日

ASA 第1日 --- ニューオリンズに着きました

アメリカン航空の大幅な遅れのためにホテル日航成田での一泊を余儀なくされ、結局、翌朝9時に成田空港を発った。

空港の職員に「前の日のチケットでは入れません」みたいなことを言われて困ったが、アメリカン航空の「チケットの日付を変えることはできない」みたいな主張が勝ち、結局は前日のチケットのまま搭乗することとなった。

臨時便はガラガラで、客はわずか50人しかいなかったようだ。
まだ夜が明けきらないうちにダラスに着き、ニューオリンズのホテルに着いたのが現地の午前11時ごろ。
ニューオリンズは思ったよりずっと暑く、真夏のような恰好をした観光客が目立つ。

以下は、トロント大学・スリンガー教授による肺保護換気に関するリフレッシャーコース "Perioperative lung protective strategies in one-lung and two-lung ventilation" のメモ書き。
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2000年代の初頭までは、PEEP なしの大きい一回換気量を用いて一側肺換気が行なわれていた。
その根拠となるものとして、一側肺換気中の PEEP の有無と一回換気量の大小をくらべると、PEEP なしの一回換気量 14 ml/kg の時が最も Pao2 が高い。 (Katz JA, et al.  Anesthesiology 1982; 56: 164-71.)

PPPE が生じると術者に輸液量が多すぎると批判されることになりがちだが、PPPE のリスク因子について調べた研究によると、輸液量や輸液バランスは PPPE 発生群と非発生群の間で差がなかった。 (Turnage WS, et al.  Chest 1993; 103: 1646-50.)

換気するたびに肺胞が開いたり閉じたりするのは、炎症反応の点から良くないことが示されている。単にアテレクの状態が続いた方がまだまし。 (Chu EK, et al.  Crit Care Med 2004; 32: 168-74.)

一側肺換気は換気側肺だけでなく、非換気側肺にも傷害をもたらしうる。 (Kozian A, et al.  Br J Anaesth 2008; 100: 549-59.)

開胸術後に換気側肺に強い非対称性の ARDS が生じるという報告。 (Padley SP, et al.  Radiology 2002; 223: 468-73.)

手術側肺は虚脱したままより、CPAP を行なった方が炎症反応の点から良い。もっとも手術を行なう上でじゃまになってしまうが。 (Verhage RJ, et al.  Br J Anaesth 2014; 112: 920-8.)

開胸手術後の肺傷害を予防する点では輸液はしぼった方がいいが、腎機能を傷害しうるという問題がつねにつきまとう。古典的な研究という意味で Gollege らの研究 (Ann Thorac Surg 1994; 58: 524-8.) が、新しい研究という意味で自分の研究が紹介されていた。

その他、スリンガー教授は小さい一回換気量と PEEP では、PEEP の方が肺保護への寄与の度合いが大きそうだという持論を展開していた。PEEP をかけていれば、一回換気量が大きくても小さくても、あまり関係ない。

さらにスターリングの式が修正されたこと、グリコカリックスについても話していた。グリコカリックスは虚血再灌流や炎症反応で傷害される。

2014年10月10日金曜日

ASA --- なぜか 出発できず成田泊

ニューオリンズに向けて出発するために成田空港に行ったら、出発便を示すボードに自分の乗る飛行機だけ "New date" みたいな見慣れない表示がしてあった。
それでいやな予感がしてアメリカン航空のカウンターに行ったら、今日は飛行機は出発しないとのこと。
ああやっぱりね・・・という感じ。
ここ数日いろいろとトラブルがあって、機体のやりくりがうまくいかないのだそうだ。
カウンターではいろいろと他の航空会社の便も含めて探してくれたようなのだが、結局は代わりの飛行機は見つからず、今夜は空港周辺の某ホテルに泊まることになってしまった。
というわけで、現在、ホテルの部屋でブログを書いているところ。
ホテルに着いたら、ホテルのキーに加えて今日の夕食と明日の朝食のチケットを渡された。
「ひょっとして、飲み放題なのでは・・・」とわずかに期待を膨らませてチケットをよーく見てみたら、裏面に「アルコール飲料代は当券には含まれておりません」と書いてあった。
これもやはり、ああやっぱりね・・・という感じ。
一応、宿泊先のホテルには、チェックインが大幅に遅れる旨、連絡を入れておいた。
すでに一泊分料金はもらっているのでチェックインはできるが、これでもし来なかったらもう一泊分の料金はいただきますよ・・・みたいなことを言っていたと思うのだが、英語の聞き取りに苦労したことも、ああやっぱりね・・・という感じがした。

2014年10月1日水曜日

指導医更新 --- 申請完了

職務経歴書へ院長先生の印鑑をいただくのに1週間かかると言われていたが、実際にはわずか2日しかかからず、今日、あらゆる書類を日本麻酔科学会に送付することができた。
まあまあスムーズに申請のプロセスが進んだように感じるのだが、気になったことがひとつ。

Web 申請を済ませた後で書類を印刷すると、昨年度分までの症例数が出力されるだけでなく、なぜか今年の4月から Web 申請日までの麻酔症例数がゼロの状態で印刷されてしまうのだ。
今年度の分も入力すべきだったのにうっかり忘れてしまったのかと、一瞬、わけがわからなくなってしまった。

これについては昨日、学会に問い合わせたところ、今年度の分については破棄していいとのこと。
どうやら学会でもこの問題については十分に認識しているようなので、今後、システムが改善されることを期待したい。